6/02/2017

oni demon haiku collection

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Oni to Haiku 鬼と俳句 Haiku with Demons

Many deal with the various rituals for the Setsubun festival, driving out the Demons.

- source : taka.no.coocan.jp/a5/cgi-bin/HAIKUreikuDB -

鬼●百鬼夜行●鬼面●赤鬼●青鬼●子鬼●餓鬼●鬼婆●鬼女●般若●夜叉●阿修羅

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Kobayashi Issa 小林一茶 (1763-1827)

夕暮れや鬼の出さうな秋の雲
枯芒むかし婆ゝ鬼あつたとさ
脇へ行くな鬼が見るぞよ寒雀
鬼打の豆に辷て泣子哉
鬼もいや菩薩もいやとなまこ哉
長き〔夜〕や心の鬼が身を責る / 長き夜や心の鬼が身を責める
其のあとの子供の声や鬼やらひ / 其迹は子供の声や鬼やらひ

gaki
青梅や餓鬼大将が肌ぬいで

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●鬼
*たら芽吹く鬼の栖を尋ねんか 原 裕
あの中に鬼やまじらん寒念佛 寒念仏 正岡子規
あやまりて鬼を出しけり傀儡師 福田井村
あらくさにたんぽぽが伸び鬼棲めり 竹下しづの女句文集 昭和十一年
いつの世も鬼を赤しと思いおり 中野吟懐子
いつぽんは鬼より紅し紅葉狩 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
うららかや鬼の茶屋とて休みの日(大江山鬼の茶屋) 角川源義 『西行の日』
おぼろ夜の鬼か仏か鈴鳴れり 石寒太 炎環
おぼろ夜の鬼ともなれずやぶれ壺 加藤秋邨 吹越
おぼろ夜の鬼なつかしや大江山 加藤楸邨
おもしろの鬼の世にゐて霞かな 斎藤梅子
およびより鬼となりゆく神楽姫 伊藤孟峰
お神楽の鬼に赤子を抱かせけり 亀井雉子男
お降りやそびらへ廻す鬼の面 原 朋冲
かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰をさがしにくる村祭 寺山修司
かくれんぼの鬼に釣瓶落しかな 宮地れい子
かくれんぼ鬼の孤独や夕焼くる 佐土井智津子
かくれ鬼冬日の塀に顔あてて 上野泰 佐介
かごめかごめ振り向く鬼に二月尽 柴田奈美
かごめ歌鬼のうしろの痩野梅 石原八束 『黒凍みの道』
かたまつて鬼も暖とる新ばしり 中原道夫
かりがねの空ひきよせる鬼屏風 堺 信子
きちきちの飛び来る鬼の雪隠に 塩川雄三
ぎんなん煎る夜はいつぴきの鬼を飼い 瀬戸青天城
ぐらぐらと鬼の声するさくらの芽 五島エミ
けさは鬼が口あけ口の水すまし 坪内稔典
げんげ田や腹減るまでの鬼ごつこ 陽田勇一
ここまでと言ひつつ生きて鬼を打つ 古賀まり子
ことば書略 鬼王が妻におくれしふすま哉 蕪村遺稿 冬
この岩の百尺寒し鬼ケ城 桂樟蹊子
こんにゃく藷鬼の首でもとるように 黒木悦子
さくらんぼ鬼が影曳くかくれんぼ 坪内稔典
さびしくて鏡の中の鬼と逢う 大西泰世 椿事
さむい手が出ている鬼の青衣 宇多喜代子
さんだらぼっちに鴆毒り鬼せよ乙女 加藤郁乎
ししむらの皺む鬼出づ花会式 能村登四郎
しばらくは鬼に添寝の夏の月 高澤晶子 純愛
しをらしや鬼が島根のあやめ咲く 室生犀星 犀星発句集
すぐ鬼にされてしまう子冬日向 袴田ゆたか
すずしさや聞けば昔は鬼の家 正岡子規
すりよりし馬の涙目鬼芒 大木あまり 雲の塔
すゝしさや聞けば昔は鬼の家 涼し 正岡子規

だだ押しの鬼に稚児泣き犬の鳴き 磯野充伯
だだ押しの鬼に触れんと女の手 茂里正治
だだ押しの鬼のあはれは胸の痣 河北斜陽
だだ押しの鬼の咆哮堂に満つ 塩川雄三

てのひらは野にあり榧の実匂う鬼や 金子皆子
となりは薩摩鬼の洗濯岩渇く 穴井太 原郷樹林
なまはげの鬼の口より酒の息 本谷久邇彦
ぬかるみを子鬼が跳んで鎮花祭 永方裕子
はたた神「陰鬼」を撃ちて余すなし 相生垣瓜人 微茫集
ばつた飛ぶ鬼の洗濯板の上 岩切貞子
ばらもん凧うなり鬼岳夏立てり 野川釈子 『苗』
ひとり住み鬼ぜんまいも味方なり 殿村菟絲子 『樹下』
ひよんどり鬼面外せば優男 山田紫水
ひよんの木にひよんの実が鳴る鬼会(おにだまり) 宮坂静生 山開
ふなばたに鬼殻さざゑ揚げられし 高澤良一 ぱらりとせ
ふみも見し鬼住跡の栗のいが 素堂 (大江山)
ふり仰ぐ鬼に設楽の星凍つる 佐野美智
ふるさとや鬼も持てない大南瓜 岩淵喜代子 硝子の仲間
ふるさとや鬼切りつける草がある 安井浩司
ほととぎす山には鬼もなかりけり 句空 俳諧撰集「有磯海」
ほととぎす鬼童が牛をかづく夜に 中勘助
ほとほとと春来る鬼か風音か 山田みづえ 木語
ほんたうの鬼になりたや洗髪 摂津よしこ
ほゝづきを鬼の灯と書くほゝゑまし 大橋敦子 手 鞠
まぎれなき火事の煙や鬼ケ島 森田峠 避暑散歩
またもとの仕事の鬼や松納 山本蓬郎
まだ暮れぬなあと鬼蜘蛛ひもじくなり 冬の土宮林菫哉
まだ鬼でゐるイディオムよ満水にお休み 加藤郁乎
まつさらの褌鬼夜の見張り役 高田好子
まゆみ実に鬼の棲むてふ巌の割れ 雨宮きぬよ
まんさくは鬼の振りむいてゆきし花 岩淵喜代子 朝の椅子
まんじゆさげ蹴散らかしゆく小鬼あり 高澤良一 さざなみやつこ
みちのくの鬼のはらわた大夕焼 渡辺誠一郎
もえ盛るこたびのことは鬼に聞け 八木三日女
もてあます勢ひとなりし鬼会の火 柴田佐知子
やすらゐや鬼も籠れる若草野 高井几董
やらはれし鬼たむろせり赤提灯 梅沢春子
やらはれし鬼どもとゆく月の道 佐野美智
やらはれし鬼の逃げたる風の音 大串章

ゆゑしらず我鬼をおもほゆ花ぐもり 飯田蛇笏 雪峡
わが野面鬼の目風の目働いて 金子皆子
をとこへし俳諧つひに拉鬼體 塚本邦雄 甘露
コンタクトレンズの蒼き鬼やらい 吉田康夫
ハイビスカス鬼も希望も沖より来 石井五堂(夏爐)
ラムネ玉鳴らし鬼子母の空があり 丸山海道
一と霰鬼の俎石を打つ 西本博子
一人かな鬼ともならず黴に棲む 河原枇杷男 定本烏宙論
一人居をつつく鬼いて豆を撒く 桑本かつ代
一人静鬼に折らせて静かなる 加藤郁乎
一刀彫鬼面に雪の暗むかな 冨田みのる
三寒の鬼面とまがふ釣り魚 河野南畦 湖の森
三河花祭の鬼のほほゑまし 成瀬正とし
下草を薙ぎ行く前鬼後鬼の裔 暮石
不知火の闇に鬼棲む匂ひあり 松本陽平
久に逢ふ二重廻しも鬼夜かな 緒方 敬
九体の鬼うとうとと藤の下 宇多喜代子
五月雨や鬼の血剥る羅生門 五月雨 正岡子規
井戸水のもの凄く透き鬼あそび 佃悦夫
人はみな鬼の裔にて芒原 木内彰志
今日追はば何時戻り来む鬼ならむ 相生垣瓜人 明治草抄
今生を燃えよと鬼の佞武多来る 成田千空
仏にも鬼にもなれず屠蘇祝ふ 吉原一暁
仏心も鬼心も力田を起す 増田斗志
修二会果て鬼共僧に還る刻 鳥羽つる江
傀儡師仏出さうか鬼出そか 平川翠扇
元日や鬼ひしぐ手も漆の上 梅室
児が眠る寒夜の鬼面あほむけに 鈴木稲花
八月は鬼の出さうな木に凭れ 柿木 多映
六月の青嶺仏相嶽鬼相 西本一都 景色
内陣の鬼の酔ひぶり花会式 植原抱芽
冬旱鬼面に髪のわづかあり 鈴木鷹夫 風の祭
冬濤は鬼の奏でる平家琵琶 出井哲朗
冬虹の一角崩す鬼のこゑ 佐川広治
冴ゆる夜のかなしきものや鬼の面 加藤知世子
凛然と鬼を打つ戯をなしにけり 徳永山冬子
凩に晝行く鬼を見たりけり 石井露月
出勤の野菊の道に鬼が出て 吉原文音
出番待つ鬼が酔ひをり花祭 山田洋々
出雲冷ゆ神楽の鬼のくれなゐも 鈴木鷹夫 風の祭
刈田の火鬼伝説の地に泊る 濱上幸男
初夢に鬼見しことは告げざりき ふけとしこ 鎌の刃
初夢や鬼逃げ切つてVサイン 木村順子
初時雨鬼も旅人も韋駄天に 熊谷愛子
初景色鬼のせんたく岩跳べり 有田千恵子
刻すぎて鬼の声あり花会式 角川照子
前鬼にも呑せて行や香需散 炭 太祇 太祇句選
力仕事寒波の中で鬼あばれ 細谷源二
勉強の嫌ひな鬼が豆を撒く 市村芳子
包丁始鬼ゐて逆手そそのかす 熊谷愛子
千の鬼出て雪原に跡もなし 加室鳴
千万鬼観念しつつ打たれけむ 相生垣瓜人 明治草抄
千仏のうしろに一鬼笹子鳴く 斎藤梅子
半島の山に棲む鬼盆休み 佐川広治
卓にたつ前鬼が肩に雪霏々たり 横山白虹
厄塚に火を移すとき鬼魅乱舞 宇田零雨
友よ我は片腕すでに鬼となりぬ 高柳重信
口ボツトの犬吠えている鬼やらい 大口元通
古びたる鬼の面なり薪能 高浜虚子
只狭き廻廊鬼に追はれたる 前川菁堂
台風過行ってみたいは五鬼の里 大月桃流
名月や甍の重きを泣ける鬼 野村喜舟 小石川
向日葵や地獄の鬼のかくれんぼ 村井羊風
君が代や鬼のすみかも苔の花 苔の花 正岡子規
吾妻はや瞬く間にぞ鬼追ひし 相生垣瓜人 明治草抄
吾曾て一鬼だに打たざりき 相生垣瓜人 明治草抄
唐辛子泪枝折や鬼の角 井原西鶴
噴き出づる酔夜神楽の鬼の面 後藤比奈夫 めんない千鳥
噴煙に圧され手をつく鬼つつじ 長谷川かな女 牡 丹
四五人の鬼みて帰る葱畑 久保純夫 水渉記
国原の鬼と並びてかき氷 柿本多映
国原は蒼々として後鬼泣けり 横山白虹
国東は鬼さへやさし桃の花 富永朝子
國原は蒼々として後鬼泣けり 横山白虹
地獄絵の鬼が溢るる春浅し 榎本愛子
地獄絵の鬼に止れり春の蝿 栗田やすし
地獄絵の鬼の痩せやう太郎月 斎藤 梅子
垣低く鬼切といふ冬の宿 岩淵喜代子 硝子の仲間

壬生の鐘一打ちごとに鬼踊る 陣場直雄
壬生念仏鬼も菩薩も足袋はだし 松田弘子
壬生狂言自が裾踏んで鬼斃る 大石悦子 群萌
壬生狂言鬼の出に打つ戸板かな 田中英子
壬生狂言鬼をいたくも嬲るなり 大石悦子 百花
壬生狂言鬼を滑車で宙づりに 福田邦子
壬生踊鬼面の紐をしめ直す 山田耕子

売れ残る大津画の鬼の春暮るゝ 春の暮 正岡子規
壷焼も鬼殻焼も奥石廊 大橋敦子
夏の霧噴き捲く前鬼後鬼像 猿橋統流子
夏の鬼なでてみて角なかりけり 久保田万太郎 流寓抄以後
夏来れば夏をちからにホ句の鬼 飯田蛇笏
夕しぐれ鬼師の蒐む瓦かな 伊藤敬子
夕空の鬼駆けりくる草の餅 長谷川櫂 天球
夕立の鬼もふらずに鈴鹿山 夕立 正岡子規
夕立の鬼も降るかと鈴鹿山 夕立 正岡子規
夕紅葉小鬼と子どもかくれんぼ 高澤晶子
夜の雛を鬼一口の鼠かな 雛 正岡子規
夜神楽に鬼の生きざま垣間見し 石崎素秋
夜神楽のいたづら鬼は村長ぞ 富永 小谷
夜神楽のもどきの鬼の草鞋ばき 西本一都
夜神楽の死にゆく鬼に手を叩く 野見山ひふみ
夜神楽や優しき鬼に踏まれもし 矢島渚男 延年
夜祭の鬼あぶりだす大焚火 藤井寿江子
夢に出し前鬼と後鬼春の山 角川春樹 夢殿

大いなる鬼の面が踊るなり 高濱年尾 年尾句集
大原の鬼にならむと紅葉酒 鈴木鷹夫 千年
大岩にかくれ鬼して磯遊び 上野泰 春潮
大暑かな吉備津に坐る鬼の釜 佐藤古城
大松明の火の粉雪の粉鬼走る 松本竜庵
大江山笑ひて鬼のものがたり 山田弘子 螢川
大江山鬼の角よりしくれける 時雨 正岡子規
大江山鬼もろともに眠るらし 竹中碧水史
大津畫の鬼に見あきぬ冬籠 冬籠 正岡子規
大焚火夜をこがしつつ鬼の舞 橋本榮治 麦生

天神も鬼人も揃へ花鎮 大屋達治
天蛾のかしらの鬼符も能の里 麭木明「白HAKU」
天駆けし鬼が息継ぐ里神楽 山本 允
天高し鬼の俎にて昼餉 板根白風子
天高し鬼の雪隠借りにゆこ 木田千女

太鼓打つ月に鬼面をのけぞらせ 大星たかし
夫立つや炎昼黒き鬼面山 加藤知世子
夾竹桃身の裡の鬼なにで消す 桝隅俊美
奈良の鬼京都の鬼に地虫出づ 桂信子 花影
妻無しの鬼面を映す寒の闇 石原八束 『断腸花』
姑の鬼もこもれる十夜かな 閑鵞
子ども等や門火のあとの鬼ごつこ 清原枴童 枴童句集
子を産んで由緒正しき鬼となる 飛永百合子
子捕ろ鬼ディズニーランドに消えしなり 坂井三輪
子神楽のまことおさなき鬼出づる 伊藤孟峰
安楽死願ふは鬼か白椿 阿部みどり女

安良居の睡りし子鬼横抱きに 関戸靖子
安良居の鬼待つ花の木蔭かな 名和三幹竹
安良居の鬼飛びあがり羯鼓打つ 宮下翠舟

家出づる頭上鬼凧の舌真赤 加藤知世子 花寂び
家書ひらく鬼の一毛現われる 安井浩司
家裏は鬼の逃げ路の雪明り 林原耒井 蜩
寒き灯や鬼を逸れたる豆青し 会津八一
寒に逝くまこと俳句の鬼として 桂信子 草影
寒明けや鬼の背負ひし大香炉 佐川広治
寒鬼這へり火を持て来させ追はんとす 高濱年尾 年尾句集
小鬼らに蜜柑ふるまへ鬼は内 中勘助
屠蘇酌めり前鬼後鬼の山長者 青畝
山焼きの爺を鬼爺と思ひけり 山焼 正岡子規
山焼けば鬼形の雲の天に在り 水原秋櫻子
峡空の凍て日輪に鬼面嵌む 友岡子郷 遠方
崖を降りあざみの道で鬼と睦む 八木三日女 落葉期
嵯峨念仏鬼の早鉦山に消ゆ 永方裕子
嵯峨念仏鬼の荒息怺ふなし 西村和子 かりそめならず
嶽鬼相雪被きても眠りても 西本一都 景色
川の面に火の燦々と鬼夜かな 松田紀子
年男われ俳諧の鬼たらむ 西本一都
年男鬼の顔して戻り来る 武田日出夫
床鳴らし来る鬼追ひの毘沙門天 山田春生
庭石の仏顔鬼顔しぐれけり ほんだゆき
弁慶坂鬼ぜんまいの大きな手 櫻井菜緒 『帰雁』
弓始其夜は鬼を退治けり 弓始 正岡子規
弓立の翳を湖国の鬼芒 吉田紫乃
引き鶴や我鬼先生の眼ン寒し 芥川龍之介
影法師鬼にうつりぬ箒木草 龍胆 長谷川かな女
徂く春や面の中なる鬼の面 福田蓼汀 山火
心中にひそめる鬼はいかに追ふ 富安風生
心中にひらく雪景また鬼景 赤尾兜子
恋の鬼泣けば冴えゆき我も冴ゆ 加藤知世子 黄 炎
悴めどまた火の粉浴び鬼が舞ふ 友岡子郷 遠方
成程の鬼の雪隠秋うらら 飯島晴子
我鬼の忌に老の頬骨宇野浩二 百合山羽公 寒雁
我鬼窟の実梅落つべき小雨かな 芥川龍之介
打たるるに慣れたる鬼や声も無き 相生垣瓜人 明治草抄
打つ豆がなくても鬼はらう夜の単身 河合央夫
折り紙の鬼折り溜むる菜種梅雨 平川常廼
捨てられし苗や鬼にも拾はれず 相生垣瓜人 明治草抄
掌の鬼のひとつに花冷えす 田中信克
掻き当ててゴッと鳴れるや鬼浅蜊 高澤良一 寒暑
揃へある鬼のやうなる登山靴 清水静子
提灯に石榴を鬼子母祭りかな 松瀬青々
摘草や清水がもとの鬼の面 井上井月
教官室覗く亥の子の小鬼かな 吉原文音
数珠玉やかごめの鬼が嫁にゆく 高橋酔月
敷かれゐる鬼一匹やこぼれ豆 東洋城千句
文も見じ鬼住む跡の栗のいが 山口素堂
日闌けてはよよと陽長ふ鬼面岩 下村ひろし 西陲集
日高見の鬼は転た寝秋の雲 千 里 香
旧正や鬼の金剛担ぎ上げ 桑原佳彦
早鉦に鬼踊り出づ嵯峨念仏 西村和子 かりそめならず
星凍てて地を打つ舞の榊鬼 橋本榮治 麦生
春のことぶれ鬼どもの出て喰ふとこそ 角川源義
春の土白足袋で踏む鬼まつり 木下きよ子
春の夜や衣桁の裾にひそむ鬼 高田蝶衣(1886-1930)
春の日や童話の小鬼泣けるなり あかぎ倦鳥
春やこの鬼の家こそ我が寄辺 沼尻巳津子
春夕焼絵本に鬼が泣いている 野坂紅羽
春寒く坐りし鬼の姿かな 長谷川かな女 雨 月
春祭鬼の丹波の幡赤し 土田祈久男 『素心』
春雷の鬼の名のつく石にかな 角光雄
時惜しむ鬼となりをり蚊をつぶし 翔
時雨るゝやうしろに鬼の小提燈 四明句集 中川四明
晩春の神楽の鬼があしをみせ 宇多喜代子
月光の鬼の醜草なり褥 高野ムツオ 雲雀の血
月出でゝ鬼もあらはに踊かな 河東碧梧桐
有明に鬼と狐の別哉 有明 正岡子規
朝の洗濯かげ美しき鬼ひそみ 植原安治
朧夜を鬼のすさべる会式かな 宮下翠舟
木も責めず鬼をも打たず卑怯なり 相生垣瓜人 明治草抄
木枯や鬼に還らむ父の貌 秋山巳之流
朴若葉鬼が出できし黒川能 中山純子 沙 羅以後
杏壇門の屋根の鬼龍子風薫る 毛塚静枝
束ねたる柊は夜の灯にうかぶ行き場なき鬼らはここにて遊べ 水野昌雄
杣の子の鬼呼ぶ遊び菫咲く 橋本榮治 麦生
松明にむせぶ鬼あり牛祭 田畑比古
枕丁の闇に鬼子母の髪のびる 穴井太 原郷樹林
枯山の昼のランプに鬼をどる 桜井博道 海上
柊に鬼の目をさす門辺かな 松瀬青々
柊咲く心中の鬼飼い馴らし 相川玖美子
柊挿すとつくに鬼の栖かな 鵜飼礼子
柿*もいで鬼が泣き出しさうな空 藤岡筑邨
柿くはゞや鬼の泣く詩を作らばや 柿 正岡子規
柿くふて鬼の泣く詩を作らばや 柿 正岡子規
桃咲けば鬼の居場所のなくなりぬ 及川希子
桃晃の豆に鬼ども逃げ失せし 阿部みどり女 月下美人
桃板の門仰ぎ去る童鬼かな 中村烏堂
桃食ふか食へよ戸隠の鬼の衆 川崎展宏
案内に鬼の出迎へ里神楽 村尾松籟
桶食ひし鬼の狂言螻蛄笑ふ 成瀬櫻桃子
梅雨の入鬼の手形の浮き立ちぬ 高井武子
梅雨の灯に非力な鬼は図形引く 山本春穂
楓林に落せし鬼の歯なるべし 高浜虚子
榊鬼五臓六腑も赭からむ 橋本榮治 麦生
榊鬼汗拭く暗き隅を得て 星野昌彦
榾明り蒙古高句麗と鬼が来る 桑原まさ子
横顔に鬼の棲みつく笑ひ初め 仙田洋子 雲は王冠
樹に攀ぢし病我鬼おもふ露の秋 飯田蛇笏 雪峡
樹上に鬼 歯が泣き濡れる小学校 西川徹郎 瞳孔祭
死にかけた子が黒鬼の絵を画いた 八木三日女 赤い地図
死にゆくは鬼もあはれや神遊び 野見山朱鳥
死ぬるとも鬼の名のつくやんまかな 角川春樹 夢殿
残雪や山に現ずる鬼の面 矢野哥遇
毛だらけの鬼子なれども枯芙蓉 川崎展宏
毬栗は丹波の鬼の笑ひなり 筑紫磐井 婆伽梵
水引草声のきれいな鬼といて 澁谷道
洞あればかくれ鬼の木しぐれけり 岩城久治
流星の尾をつかみしは鬼子かな 丸山海道
浅間こごし鬼の名熔岩にも躑躅にも 西本一都
浦島草鬼棲む部屋を誰も持ち 北村菜々子
海照りて鬼の手作り岩を灼く 高澤良一 随笑
海髪なびく鬼界ヶ島の難破船 品川鈴子
涅槃図の鬼の金冠粗なりけり 稲荷島人
淋しさよ/秩父も/鬼も/老いぬれば 高柳重信
淡紅き紫陽花の陰で鬼を視る 仁平勝 花盗人
深傷負ひ水辺を曲がる鬼すゝき 攝津幸彦
添水鳴り円空彫の鬼が哭く 赤松子
湖畔馬車鬼の捨子が窓に見え 河野南畦 『硝子の船』
湧く霧に鬼面したたる里神楽 松本幹雄
湯豆腐や鬼の席には鬼坐る 藤原友治
満月に心の鬼も踊り出し 塚本みや子
満月の夜ぞドラキユラも鬼も出よ 斎藤幸子
滝ときに鬼相を見せることのあり 宗田安正
灯せば忽ち鬼となる佞武多 工藤乃里子
炉話の間抜けな鬼に終りけり 太田土男 『西那須野』
烏賊釣りの漁火鬼の目ん玉大 高澤良一 随笑
焔の色の鬼の衣や里神楽 山本勇武
焼栗やむかし丹波に鬼がゐて 大石悦子 群萌
煤の顔かたみに笑ふ鬼くすべ 安岡みちこ
熊も鬼も嶽の寝息も太きかな 土田祈久男 『素心』
燻べらるる鬼の叫喚霙降る 林十九楼
爆ぜし火に鬼もすくみぬ牛祭 柴山みちを
父と見し紅葉ぞしるき鬼面川 川崎展宏
父と見し紅葉の極み鬼面川 川崎展宏
父の鬼はわが鬼なりき桜咲く 原田喬
猟銃音いつしか鬼を養ひぬ 小泉八重子
猪の肝食つて舞ふ榊鬼 辻恵美子
猿酒や鬼の栖むなる大江山 青木月斗
田村丸の祀れる鬼や枯薄 菅原師竹句集
田遊の鬼が簓で打ちにくる 内山芳子
町の子ら雛の宵の鬼遊び 木歩句集 富田木歩
画鬼詩魔に説く百日の安居かな 菅原師竹句集
疑心暗鬼の鬼かもしれずわらふべし 稲垣きくの
病む妻やとゞこほる雲鬼すゝき 太宰治
痩身のみ吾に似る我鬼の忌なりけり 林翔 和紙
白れんげ燃えたつ昼をひとり鬼日向の芝にうしろ向きおり 馬場あき子
白息のかつかつ鬼面をどりかな 矢崎良子
白桃を投げれば鬼が口ぬぐふ 仙田洋子 橋のあなたに
白椿そこは鬼のあつまる木 松本恭子 二つのレモン 以後
白萩の夜に入り一鬼うづくまる 寺井文子
白魚や鬼心仏心おどり喰ひ 上野昭一
百姓の梅干我鬼の忌に貰ふ 百合山羽公 寒雁
目覚めたる鬼の加はる野焼かな 小泉八重子
盲鬼あやうく骨のなるほうへ 仁平勝 東京物語
真横から見ると飢(ひも)じい鬼の面 吉川義弘
眠るだけ眠れば鬼に逢いたくなる 大西泰世 『こいびとになつてくださいますか』
石の上に 秋の鬼ゐて火を焚けり 富澤赤黄男
石の上に秋の鬼ゐて火を焚けり 富沢赤黄男
砂糠黍植うる鬼界ヶ島晴れて 河野照子
破芭蕉鬼子のごとき実を曝し 尾池葉子
神の留守一刀彫に鬼うまれ 能村研三
神よりも鬼のよろしき神楽かな 野見山ひふみ
祭夏めく風があそばす鬼の面 河野南畦 『空の貌』
祭鬼面を外して薬飲む 長谷川青松
福は内鬼も内とぞ鬼子母神 渡辺方子
秋の暮鬼面かむれば何見えむ 八牧美喜子
秋めくや鬼界ケ島を去らぬ雲 福永耕二
秋夕焼かくれんぼの鬼泣き出す 細川波光
秋天に鬼の雪隠蓋もなし 塩川雄三
秋祭鬼の草鞋の緒が切れし 小川原嘘帥
秋祭鬼面をかぶり心も鬼 山口誓子 不動
秋風やたはむれに買ふ鬼の面 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
秋風や無垢極まつて鬼の面 鳥居おさむ
秋風や鬼の支へし大香炉 福田蓼汀 秋風挽歌
秋風を引寄せ鬼の棲む山ぞ 長谷川史郊
秘めごとや鬼雲となる夕焼雲 大木あまり 火のいろに
穴を出てわれは俳句の鬼たらむ 下村槐太
空箱に空箱詰める寒の鬼 和田悟朗
立春の庭に捨てられ鬼の面 原コウ子
竜燈鬼*吽の眼の闇に冴ゆ 加藤知世子 花 季
竜骨や鬼のあそびの晩夏の子 河野南畦 湖の森
竹煮草鬼の棲家といふあたり 脇坂啓子
笑ミ栗や鬼一口に青き空 東洋城千句
笹鳴や鬼の窟に鬼の影 田中水桜
箱庭に鬼も据ゑたらどうでせう 岩淵喜代子 硝子の仲間
簗崩れこれより蝦夷は鬼の国 田村正義
糸取鍋鬼も煮ころす盤石に 安江緑翠 『枯野の家』
紀州鬼の国山累々と蜀魂 中村苑子
紅椿後鬼がかざして雪霏々たり 横山白虹
紅葉山鬼も天狗もをりにけり 高橋将夫
紅葉狩鬼すむ方を見つけたり 紅葉狩 正岡子規
終日の雨まなうらに鬼形の幼女 林田紀音夫
結び目に鬼を棲まわす縄梯子 大西泰世 椿事
絵の中の鬼が念仏青嵐 西村たみ子
絵手紙の鬼はみ出せり年の豆 阪井貞子
緑陰にゐて釜ゆでの鬼を見る 森田たけし
罌麦や鬼一口の草かくれ 尾崎紅葉
罐蹴りや伊吹颪は鬼へ吹く 日比野安平
美しき鬼来て氷融かしむる 鳴戸 奈菜
老いてなほ稽古の鬼や寒稽古 竹原梢梧
老人の打つに忍びぬ老鬼かな 相生垣瓜人(1898-1985)
老声をもて老鬼逐ふ二タ三こゑ 千代田葛彦
肉づきの鬼面をはがす報恩講 森本青三呂
背に日を当てて眠れる鬼の山 土田祈久男 『素心』
腕もがれ鬼は奈落へ嵯峨念仏 鈴木妙子
膝ゆする身ぐせの寒し鬼ひとり 石原八束 藍微塵
舞楽面鬼の白息たちのぼる 吉原文音
色好む鬼のあはれも里神楽 上田五千石 琥珀

花すすき鬼が吐息を吐くところ 松本恭子 世紀末の竟宴 テーマによる競詠集
花に句に睨(さ)めて狂うぞ鬼懸りなる 折笠美秋 君なら蝶に
花の木を移る女や鬼の来る 雑草 長谷川零餘子
花会式幼なじみの鬼の衆 山口素基
花冷えや目かくし鬼の指にまで 天野素子
花埃目隠しきつく鬼となる 満田春日
花散るやかごめかごめの鬼の背に 大石悦子 群萌
花神楽松明に鬼導かれ 三浦晴子 『晴』
花神楽鬼面に動く喉仏 三浦晴子 『晴』
花祭り鬼が草鞋の泥ぬぐふ 片山浮葉
花薊おのれも我鬼に似たるよな 芥川龍之介
花見戻り丹波の鬼のすだく夜に 蕪村
花野わが棒ひと振りの鬼割らる 安井浩司 青年経

荒縄の鬼の襷や亡者送り 牛山孝子
荷車の轅のくさる鬼薇 宮坂静生 樹下
菜の花の囲める鬼の家孤つ 沼尻巳津子
華やかに花を鎮めて鬼の祈舞 豊田都峰
華見戻り丹波の鬼のすだく夜に 蕪村遺稿 春
菱の実や鬼の貌して茹でらるる 藤本静子
萱刈るや鬼の炊ぎし巖のこる 西本一都 景色
落栗や記憶の奥に鬼のこゑ 鍵和田釉子
蒙古高句麗凩が来る鬼が来る 文挟夫佐恵 遠い橋
蒲の穂を吹いて小鬼となる童子 川村三千夫
蓮の実の飛んで鬼討つはなしかな 坂内佳禰
蓮ひらく一人の鬼がくる夕べ 菊川貞夫
蔵々の鬼一声に遺らひけり 折井眞琴
蕎麦刈の背後に迫る鬼の山 土田祈久男 『素心』
薪能残り火鬼が蹴つて舞ふ 平岩 静
藪巻や目隠し鬼をひとくくり 二村典子
虫鳴くや灯のまはり飛ぶ小さき鬼 月舟俳句集 原月舟
蚊帳ごしに鬼を笞うつ今朝の秋 蕪村 五車反古
蛍火やおかめの鬼になる間合ひ 星野石雀
蛍火やここ恐ろしき八鬼尾谷 田上尼 俳諧撰集玉藻集
蜩や閻魔も鬼も地に帰り 野澤節子 『駿河蘭』
蝦夷菊の鬼が島なる雲なりや 小野信一
蟄中の雨鬼さめにけり春の雷 菅原師竹句集
行春を鬼となりたる茅花かな 安藤橡面坊
見たな/見たなの/磐手の鬼を/見にゆかむ 高柳重信
角樽をまくらの鬼や紅葉狩 井原西鶴
討たれたる鬼が主役の里神楽 角川春樹
許されて風を生むより鬼を生む 大西泰世 世紀末の小町
語りべの鬼になるとき稲びかり 佐藤綾子
谷川や鬼の舌ほど紅葉す 田中シズ子
谷木の鬼なおそれそともし笛 其角「虚栗」

豆うたれゐる保母の鬼美しき 宮崎氷滴
豆ごときでは出て行かぬ鬱の鬼 飯島晴子
豆たたく鬼歯の谺たのしめり 影島智子
豆とりて我も心の鬼うたん 野坡
豆を打ち見えざる鬼をひたと追う 矢沢ふさ子
豆を撒く新マンションに棲む鬼へ 品川鈴子
豆を撒く鬼まだ棲まぬ嬰のほとり 野木徑草
豆囃す生駒の鬼はふるき鬼 西本一都
豆腐氷らす屋根に鬼来て争へり 清原枴童 枴童句集
豆食うて鬼も追はずに遊びけり 木歩句集 富田木歩

責め鬼の手首の白く見えにけり 小島千架子
赤寺の鬼に出逢ひし昼寝かな 龍岡晋
赭丹ぬりの鬼もしらめよ除夜の豆 惟中
起ち上りまこと泣きけり壬生の鬼 小原菁々子
越の湯や鬼粽添へ朝の膳 岡田日郎
踊る赤鬼跳ぶ松明は小鬼たち 羽部洞然
踊子の踊衣裳は波に鬼 陣場直雄
身にふかき鬼に及びし湯ざめかな 佐怒賀正美
身のうちの鬼のめざむる花月夜 木内彰志
身の鬼を煽ぎてゐたる団扇かな 石原八束 『仮幻』
車座につぐ焼酎は鬼ころし 岡田律夫
転舵して雲の峰わく鬼ケ島 那須淳男
迫はれてや脇にはづるる鬼の面 荷兮
追い出せぬ鬼と同居のおにやらい 中野欸乃
逃げきって鬼にもなれず爪を切る 大西泰世 椿事
逃げ惑ふ衆に鬼会の鬼猛り 川上紅二
造り髪ゆれて恐ろし鬼佞武多 村上三良
運慶が鬼の皮たく蚊遣かな 古白遺稿 藤野古白
道をしへ鬼ヶ城より引き返す 塩川雄三
酒鬼の日はかなしかりしと法師蝉 加藤知世子 花 季
酒鬼舌鬼大和の闇に花満ちて 橋本榮治 麦生
酔ざめの水飲みにくる祭鬼 伊藤久見子
里神楽出を待つ鬼が子をあやす 橋本五月
重ね貼る鬼除け護符や夏山家 能村登四郎
鈍(にび)いろの振つて涼しき鬼の鈴 山田みづえ 草譜以後
鉦提げて叩かぬ鬼の朧かな 碧童句集 小澤碧童
鉦鼓今急なる堂裡鬼やらい 富田うしほ
鍾鬼画く鍛治屋か裏の幟かな 幟 正岡子規
鏡絵の大蛇は青く鬼赤く 高澤良一 寒暑
鐘楼に鬼くる刻か霜の声 高井北杜

闇のない街に鬼棲み鬼やらい 石塚真樹
隆々の鬼の金棒軒氷柱 高澤良一 寒暑
隠れんぼ鬼の見つけし返り花 保田英太郎
雛の間をかくれんぼうの鬼覗く 行方克己 知音
雨さそふこの鬼嫁の送り火は 赤松[けい]子 白毫
雨乞の僧正鬼となられけり 野村喜舟
雨鬼風鬼夕立晴れを昼寐かな 菅原師竹句集
雨鬼鳴きてくもる菜園柘榴さく 飯田蛇笏 雪峡
雪しづる鬼射し弓の黒漆 林翔 和紙
雪ねむる小枝に子鬼ワイワイ来た 小山淑
雪の夜は火斑(ひがた)奪ひに鬼が来る 佐川広治
雪の幻想鬼が来天女来わがねむり 加藤知世子 花寂び
雪岳の上眼が暗く鬼がいて 和知喜八 同齢
雪渓に鬼の足跡めきしもの 横瀬ふき子
雪蛍漂ひ鬼の雪隠よ 堀井英子
雪雲や鬼も肱を出だすべう 去来 俳諧撰集「藤の実」
雪霏々と鬼のふるさと大江山 京極杞陽
雪鬼の取りのこされし月夜かな 寺山修司
霙るるや鬼の念仏傘を背負ひ 龍岡晋
霜の声この夜鬼子や捨てられし 冬の土宮林菫哉
霧曳いて鳥押し渡る鬼ケ島 西村公鳳
霧黒くなり来て岳も鬼相帯ぶ 太田嗟
露の山越ゆれば啓く鬼の景 沼尻巳津子
露の橋わたりて鬼の声を出す 木村えつ
青すすきいつからお前は鬼の顔 山田緑光
青汁を鬼の娘に飲まされる 岩下四十雀
面の眼に瞳のある亥の子鬼が来る 皆吉爽雨
面打ちは鬼と向き合ひ水涸るる 小森谷正枝
音たててコンパクト鬼閉じ込めし 出口 善子
風を踏む丹波の鬼や五加木飯 進藤一考
風鬼元風紀係よ風花す 坪内稔典
颱風鬼吾が唇の朱を奪ふ 竹下しづの女句文集 昭和十二年
餅花や鬼心仏心闘へる 阿部みどり女
高きより見下す鬼や壬生人出 野村しげる
高千穂の鬼が冬菜を担ぎ来る 佐川広治
髪切虫とぶや鬼形を現はして 百合山羽公 寒雁
鬼 およそ/その背後 は/桔梗 なり 折笠美秋 火傅書
鬼あそび捕まるならば桃畑で 遠山陽子
鬼いたどりあばれ川底乾きをり 河野多希女 納め髪
鬼が出て泣く子笑ふ子壬生念仏 中田余瓶
鬼が見てゐるかも知れぬ豆を炒る 古内一吐
鬼が門限を忘れ菜の花になつてる 磯貝碧蹄館 握手
鬼が食べちらしてまれに冬苺 浦野芳南
鬼くさし海から来た道の野や山 金子皆子
鬼ごつこ枝垂桜をくぐり抜け 草間時彦 櫻山
鬼ごつこ桜の下に鬼がゐる 杉田竹軒
鬼ごつこ銀杏を踏みつかまりぬ 加藤瑠璃子
鬼ごとやお神楽台の下くゞり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集

鬼さん鬼さん辻の残雪陽の色に 川崎展宏
鬼すべの火に初髪をいたはりぬ 磯貝碧蹄館
鬼すべの火の粉明るき月へ飛び 西住三恵
鬼すべの闇ずん~と更けにけり 吉冨平太翁
鬼すべの鬼の縄尻とつて禰宜 江口竹亭

鬼たちが教へのこせし田楽の味噌よ苦しみ慎ましくして 高松英明
鬼つつじ霧は塊なして飛ぶ 藤岡筑邨
鬼てふ/現(せかい)の/涯が来てゐる/秋の暮 林桂 銀の蝉
鬼となり君喰らふべし天の川 田沼和美
鬼となり蛇にもなったかくれんぼ 岸本マチ子
鬼となり言の葉を吐く櫨紅葉 高澤晶子
鬼となる子が目を隠す冬木立 赤井淳子
鬼となる身はあぢきなき舎人かな 松瀬青々
鬼とは私のことか豆がまかれる 住宅顕信 未完成
鬼ともなり佛ともなり虚子の忌なり 藤田湘子 てんてん
鬼と老ゆさくらの下のかくれんぼ 都井千年
鬼と見し桜の中の男かな 上村占魚 鮎

鬼なれば囃されながら臑こぶら赤く脹れきてなほ舞ひ狂ふ 春日井建

鬼にげるずんずんのびる話の木 大木石子
鬼にしてこの小春晴れ花蓑忌 伊藤敬子
鬼に影踏まれしよりの冬夕焼 萩山栄一
鬼に手を曳かれて陟(のぼ)る花の山 佐川広治
鬼に酒酌ませて山は眠りたる 稲生正子
鬼に随き炎天の道あるばかり 岸田稚魚 『萩供養』

鬼のこころに今とほくゐる日向ぼこ つじ加代子
鬼のぞく窓に夜の咳あるばかり 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
鬼の出る窓少し開け豆を撒く 村井信子
鬼の出る葛籠負うて摩耶詣 星野石雀
鬼の居て門に玉巻く芭蕉かな 三由淡紅
鬼の形相してみる 沸々さびしくなる 折笠美秋 虎嘯記
鬼の手振りはだあすこだあだあ時雨つかむ 加藤楸邨
鬼の来ぬ間の羽子の音きこえけり 久保田万太郎 草の丈
鬼の棲む三日月を見せ肩ぐるま 林田紀音夫
鬼の棲む山大滝を落しけり 井桁白陶
鬼の棲む深山を包む冬の霧 澤村一与
鬼の目に生まれてをかし白露など 筑紫磐井 婆伽梵
鬼の目に見られてゐたる櫻の夜 石嶌岳
鬼の眼にたかまりてくる秋の潮 磯貝碧蹄館
鬼の眼の泪のごとし唐辛子 鈴木鷹夫 千年
鬼の窟は十歩の高さ蝶凍てて 田中水桜
鬼の護符刷る廬山寺の桔梗かな 飯田はるみ
鬼の貌しぐれてかなし瓦塀 下村ひろし 西陲集
鬼の貌をどるしろはなまんじゆしやげ 柿本多映
鬼の身に虚ありなむ雪明り 沼尻巳津子
鬼の身実やさしかなしと言ふなれば妻とふ鬼とわれは棲みにき 岩田正
鬼の間や夜の紅葉の錦縁 言水 選集「板東太郎」
鬼の面とれば童顔薪能 塩川雄三
鬼の面沖へ放れば土用波 安達美那子
鬼の顔してをるならむ毛虫焼く 井上浩一郎
鬼の首祀る本堂沙羅の花 清水弓月

鬼はみな一歯も欠けず春の山 友岡子郷 翌
鬼は体内わが一系の血となせり 大井恒行
鬼は帰なり帚木を生む女ならむ 加藤郁乎
鬼は遺り鬼面瓦は愛蔵す 百合山羽公 寒雁
鬼ひしぐこぶしも露の宿り哉 露 正岡子規
鬼ひしぐ手の巾したる火鉢哉 小栗風葉
鬼ひしぐ手を徒に接木かな 尾崎紅葉
鬼へまく豆が機械にぶつかりぬ 五十嵐研三
鬼へ撒く豆はねかへるわが身にも 手塚七木
鬼ぼうふらの天井ちちはは脱れえず 野呂田稔
鬼めける汽車の釜焚き秋の暮 石塚友二 光塵

鬼もまた心のかたち豆を打つ 中原道夫
鬼も内けふ父の忌の遥かなり 吉元和子
鬼も蛇も来よと柊挿さでけり 後藤綾子(1913-94)
鬼よりも病魔が恐し豆を撒く 田口利子
鬼を囃す背に冬耕の泥のはね 友岡子郷 遠方
鬼を山が笑ひかへすや明の春 横井也有 蘿葉集
鬼を打つ妻の細声闇に伸ぶ 小林康治 『華髪』
鬼を打つ眦をあげむとぞ思ふ 小林康治
鬼を視たるが/義民はじめや/飛雪の/両手 林桂 黄昏の薔薇 抄
鬼を追ふときのみ夫の声荒し 品川鈴子
鬼を追ふ老妻酒を飲む老夫 相生垣瓜人 明治草抄
鬼を追ふ豆は夜の木に鳴りにけり 福島小蕾
鬼ケ城の岩かけのぼる冬怒濤 山崎新多浪
鬼ケ城夏鶯の遠音して 前田普羅 新訂普羅句集
鬼ケ嶋十とせの霧の霽間より 尾崎紅葉
鬼ヶ島へさみだれの波たゞ白し 渡辺桂子
鬼ヶ島見ていて我ら少し老ゆ 山口 剛
鬼一と口を逃るる萩の叢深く 長谷川かな女 花寂び
鬼一匹出でて山葵を掘るごとし 齋藤玄 『狩眼』
鬼事に髪のくづれる日永哉 日永 正岡子規
鬼事やはては泣き出す秋の暮 秋の暮 正岡子規
鬼事や女の鬼に花が散る 散桜 正岡子規
鬼儺ふときにも見えし嶺の星 原石鼎
鬼凧を買ふほかはなし壱岐土産 原裕 『新治』
鬼出でて動き極まる壬生念仏 仙田敬子
鬼呼ぶと神楽太鼓の荒ぶかな ふけとしこ 鎌の刃
鬼塀の鬼が霰を撥ね返す 下村ひろし 西陲集
鬼夜十日経ても火の番の残りをり 山田紀子
鬼嫌ふ豆のはづみのたのしくて 杉山岳陽
鬼宿る樹が減り甲斐のひびぐすり 穴井太 原郷樹林
鬼招んで企み為さむ冷し酒 藤田湘子 てんてん
鬼拝む背にけはひして落椿 鍵和田[ゆう]子 浮標
鬼木偶の寄り目にとほき桃霞 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
鬼杉のうしろの真闇夜鷹鳴く 豊長みのる
鬼栖むとわらびぜんまい闌けつくす 野澤節子 『八朶集』
鬼棲みし安達ヶ原に蝌蚪育つ 石川文子
鬼棲みし里に嫁来る雪間草 柏原眠雨
鬼棲むといふ半島の萩あかり 佐川広治
鬼棲むに佳きみよしのやさくら咲く 上野さち子
鬼泣いて話終わりぬ昼ちちろ 由利雪二
鬼燻す生松葉どつと炎吹く 大野とし江
鬼燻の火襖をとぶ鬼の影 岡部六弥太
鬼燻べて楠の大樹も枝鳴らす 山田つるの
鬼燻堂煙を煽ぐ大団扇 山田つるの
鬼甍より恐ろしき鳩時計 山崎尚生
鬼界への通路のごとく紅葉道 伊津野功一
鬼祭火の粉が星にとびかかる 山本白雲
鬼祭茶髪の鬼の赤き足袋 木村喜美子
鬼老いて人へよろける里神楽 橋本一峰
鬼胎とはなんたる完全さの訓話学だらう 加藤郁乎
鬼蜘蛛の囲も借り足長ぐもの網 天野博子
鬼蜘蛛の囲を張り終へし月夜かな 小林いまよ
鬼赤く戦争はまだつづくなり 三橋敏雄 眞神
鬼踊そばえいろ濃く通りけり 永作火童
鬼踊り消え寒星と壁一枚 友岡子郷 遠方
鬼踊り鬼にまじりし奪衣婆 金子知代
鬼追つてしまへばなにもなくなるよ 矢島渚男 延年
鬼追のともしび消えて鹿の闇 太田 暁
鬼追はれ夜昼峠までゆくか 正木ゆう子 静かな水
鬼追ひつ子の声強くなりにけり 加藤知世子 花 季
鬼追ひの篝火に塔泛びけり 安田まさる
鬼退治せむ早襷壬生狂言 大橋敦子
鬼連れてさらば沢蟹の村よ 林唯夫
鬼遣らふここに棲みたき鬼は棲め 楠節子
鬼遣らふ心の鬼も遣らひたし 楠節子
鬼遣りし声を老躯に収めけり 百合山羽公 寒雁
鬼部屋は男の子ばかりや花祭 浜島君江
鬼野老されば女中のすだくなり 安昌 選集「板東太郎」

鬼面そは夏痩叛骨はみ出て角 香西照雄 素心
鬼面つければ暗い湖底の音が聞こえる 飯島翆壺洞
鬼面とて翳れば愁ふ秋灯 鍵和田[ゆう]子 未来図
鬼面となり仏相となり夜霧の工夫 加藤知世子 黄 炎
鬼面にも大小のあり壬生念仏 中原一樹
鬼面よりのぞく目が燃ゆ大焚火 橋本榮治 麦生

鬼飲みをさせられてをる滑子汁 茨木和生 往馬
鬼飼ひし日のあらなくに濁り鮒 後藤綾子
鮮烈な夕暮 鬼の肉屋が<もういいかい> 星永文夫
鰯雲戸隠山はやや鬼相 中村草田男
鳥帰り汁甘くなる鬼うどん 大木あまり 山の夢
鶏散らす鬼の台詞で枯老婆 河合凱夫 飛礫
麗かや鬼の鏡の割れるまで 永田耕衣 冷位
麦播きし畑に鬼会の火の粉飛ぶ 鈴木厚子
麦笛は鬼の手にありかくれんぼ 西山竹比古
黄落や仏もすなるかくれ鬼 鳥居美智子
齢ほど星降る夜よ鬼やらい 黒川憲三
なやらふや大津絵の鬼目に浮べ 杉本零
夕焼や大津絵の鬼瀬田渡る 森島堅太郎

大津絵の鬼が手を拍つ紅葉山 桂信子 遠い橋 Otsu-e
大津絵の鬼が杖つく石蕗日和 谷中隆子
大津絵の鬼が火を焚く除夜の鐘 渡辺信子
大津絵の鬼が見栄切る年忘 松本幹雄
大津絵の鬼が顔出す灌仏会 上田健三
大津絵の鬼と遊びし夏初め 磯谷節子
大津絵の鬼に初日や庵の壁 柑子句集 籾山柑子
大津絵の鬼に止まりし秋の蜂 小山たけし
大津絵の鬼のうそぶく夏座敷 小川昭江「沖歳時記」
大津絵の鬼のふどしの薄暑かな 大石悦子 群萌
大津絵の鬼の哭きだす無月かな 永方裕子
大津絵の鬼の朱色の大暑かな 能村登四郎 天上華
大津絵の鬼の来てゐる注連貰 関戸靖子
大津絵の鬼の酩酊夕立来る 岸間光女
大津絵の鬼の霍乱めいてきし 伊藤白潮
大津絵の鬼ふと暑くふと涼し 後藤比奈夫 めんない千鳥
大津絵の鬼もよごれつ榾明り 闌更
大津絵の鬼も出て来し追儺かな 大石悦子 群萌
大津絵の鬼も汚れつ榾あかり 闌更
大津絵の鬼も踊るか月おぼろ 長谷川史郊
大津絵の鬼をどり出すおぼろかな 小松崎爽青
大津絵の鬼出て喰ふ柘榴かな 黒田桜の園
大津絵の鬼枕上ミ宿夜長 大橋敦子 匂 玉
大津絵や鬼も背に負ふ梅雨の傘 安住敦

いなづまに鬼は鬼の子産みにけり 後藤綾子
ほーいほい鬼の子来るか雪来るか 奥坂まや
サーカスの去りて鬼の子残さるる 片岡眞紀子
柊に鬼の子のゐる日和かな 中村 剛
神木に揺れて鬼の子年を越す 茂里正治
蓑出づと鬼の子坊主頭なり 中田剛 珠樹以後
食扶持のほどは働き鬼の子よ 鳥居美智子

鬼の子が吹かれ古里遠くせり 飯泉葉子
鬼の子といはれて蓑を深くせり 櫛原希伊子
鬼の子にあらずこやつは佛の子 藤田湘子 てんてん
鬼の子に矢車鳴るよ小名木川(深川芭蕉庵址) 角川源義 『神々の宴』
鬼の子に空青すぎる深すぎる 大島雄作
鬼の子に虚子一行の立ちどまる 岩永佐保
鬼の子のあるある法則明日は雨 鷲田 環
鬼の子のはしやぎて逃げる節分会 平岡喜美子
鬼の子のふるへなかなかをさまらず 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
鬼の子のまだ頑是なし花石榴 柘榴の花 正岡子規
鬼の子の嫌がるかほを覗きけり 西田 孝
鬼の子の宙ぶらりんに暮るるなり 大竹多可志
鬼の子の揺るる草津の高札場 深川知子
鬼の子の揺籃ゆらす風の唄 田中あかね
鬼の子の母者母者と哭くもあり 中田剛 珠樹以後
鬼の子の糸のゆれざま楽しもよ 石川桂郎 四温
鬼の子の貌出してみよ出しにけり 那須 淳男
鬼の子の遊びせんとや生れけむ 島田柊
鬼の子の鎧の蓑の世を拗ねる 三国眞澄
鬼の子や糸一本を天に吊る 難波鎮郷
鬼の子をいくつもさげて式部の実 駒沢たか子
鬼の子を攫ひ疾風の過ぎにけり □田信子
鬼の子を鳴かせ望岳亭の軒 加古宗也

鬼門とも知らぬ鬼の子下りけり 三田きえ子

あをあをと星が炎えたり鬼やらひ 相馬遷子 山國
さびしくてなやらひし鬼呼び戻す 関戸靖子
なやらひのおろおろ鬼は家に来よ 山田みづえ 手甲
なやらひの鬼が出を待つ庫裏楽屋 安田孔甫
なやらひの鬼が酒くむ興福寺 河合佳代子
なやらひの鬼くたくたの肉襦袢 後藤綾子
なやらひの鬼の忘れし雪の傘 井上弘美
なやらひや鬼逃ぐる堀細る闇 長谷川かな女 花寂び
なやらふや大津絵の鬼目に浮べ 杉本零
やらふべき心の鬼も老いにけり 清水基吉(1918-)
らん~と星空生きぬ鬼やらひ 徳永山冬子
わが声のふと母に似て鬼やらひ 古賀まり子
交通遺児声はりあげて鬼やらふ 佐藤信子
人の家の鬼やらふ声ききて病む 古賀まり子 緑の野
人の波大きくゆれて鬼やらひ 佐藤礼子
人間の鬼が見てゐる鬼やらひ 角川春樹
伊賀人の忍者姿の鬼やらひ 間瀬淑子
六匹の大和の鬼をやらふなり 角川春樹 夢殿

凛々と山を下り来て鬼やらふ 小林康治 『華髪』
刀剣商抜身飾りて鬼やらふ 林 保子
北斗立つ夜空の青き鬼やらひ 有田八州彦
十粒ほど打ちて仕舞や鬼やらひ 角川照子
吹雪もて宮をつつみぬ鬼やらひ 矢島渚男 百済野
味噌納屋の鬼をやらひて終りけり 野原 春醪
塀隣竜光院の鬼やらひ 大場白水郎 散木集
声あげて虚しくなりぬ鬼やらひ 古賀まり子 緑の野
夕澄みの島に火の見ゆ鬼やらひ 中拓夫
夜の空も北は淋しき鬼やらひ 相馬遷子 山河
大寺の前の小寺や鬼やらひ 中島杏子
大松明回廊かけて鬼やらふ 平松公代
大雪のなほ降る闇へ鬼やらふ 相馬遷子 山河
女とてこの家の柱鬼やらひ 上野章子
姿ある鬼あはれなり鬼やらひ 三橋敏雄 畳の上
姿見の裏のくらがり鬼やらふ 山本右近
少年に夜の崖蒼し鬼やらひ 岡本 眸
幼くて鬼やらひをる壁隣 鷹羽狩行
幼児席ある大寺の鬼やらひ 中里泰子
建長寺かつぽれ踊る鬼やらひ 西本才子
廻廊にかつぽれ踊る鬼やらひ 阿部トキ
御文庫の内より声や鬼やらひ 大場白水郎 散木集
思ひきり腰痛の鬼やらひけり 本杉勢都子
我とわが声のふしぎな鬼やらひ 能村登四郎
我の外鬼居ぬ家の鬼やらひ 山田慶子
戸があいて半月覗く鬼やらひ 鍵和田[ゆう]子 浮標
戸の鍵探す遠くで鬼やらひ 鍵和田釉子
掻き分けるほどの濃き闇鬼やらふ 鷹羽狩行
教室に棲める小鬼もやらひけり 樋笠文
星はみな東を嫌ひ鬼やらひ 中拓夫
晩年の一児大事に鬼やらひ 沢藤紫星 『活字架』
木々に隙ありて深雪や鬼やらひ 宮坂静生 春の鹿
木隠れの灯はなやらひの鬼溜り 中村豊
杣は谿へ双手をひらき鬼やらひ 藤原 如水
東京の宵空となり鬼やらひ 久米正雄 返り花
橋までは吾家とぞ思ふ鬼やらひ 久米正雄 返り花
櫓組む寺や火攻の鬼やらひ 富田潮児
歯朶青きところへ鬼をやらひけり 山本洋子
毘沙門天槍をかざして鬼やらふ 花納花子
海女は沖の女星に鬼をやらふかな 猿田咲子
灯のいろを踏めば氷や鬼やらひ 長谷川櫂 天球
灯を福の神のごと負ひ鬼やらふ 川村紫陽
父を待ちゐしが小声に鬼やらふ 木内怜子
父母の幼に見ゆる鬼やらひ 大槻一郎
狭間なす古き柱や鬼やらふ 齋藤玄 飛雪
留守の日の何やらふとて鬼やらひ 安東次男 昨
百姓の坂東声や鬼やらひ 宮下翠舟
石をつつむ氷もありぬ鬼やらひ 宇佐美魚目 天地存問
石段にたばしる豆や鬼やらひ 野村喜舟 小石川
硝子戸を開きて海へ鬼やらふ 山口波津女 良人
節分草やらひし鬼の数ならむ 間渕うめ子
紅梅のあたりが暮れて鬼やらふ 角川春樹
考へる葦ともなれず鬼やらふ 久保田慶子
色町に隣る寺町鬼やらひ 松根久雄
草の戸の開いて洩る灯や鬼やらひ 松本たかし
藁しべの田に撒かれたる鬼やらひ 宮坂静生 樹下
藁の香の闇がふくらむ鬼やらひ 吉田敏夫
裃の下は洋服鬼やらふ 杉山三知子
裏口のサッカーボール鬼やらひ 森美樹
裸電球鬼やらふ影巨きくす 山根真矢
西天に昏む茜や鬼やらふ 相馬遷子 雪嶺
豆を食ぶだけの二人や鬼やらひ 森奈賀子
赤鬼は日本の鬼鬼やらひ 石田波郷
足よりも筆の衰へ鬼やらひ 清水基吉
路地奥の鬼やらふ声幼かり 安野良子 『篝火草』
身の内の鬼やらひまづ豆を食ぶ 林えり子
身籠りし妻のこゑなり鬼やらひ 小島健
道ばたの雪の伏屋の鬼やらひ 高浜虚子
鉦太妓滅多打ちして鬼やらふ 武田稜子
開く戸に月のひそめる鬼やらひ 原口踏青
闇の端に爪先立ちて鬼やらふ 吉田銀葉
雪凝りし妙義嶺へ鬼やらひけり 堀口星眠 営巣期
雲うらをかすむる機影鬼やらひ 飯田蛇笏 春蘭
面少しずれたる鬼をやらひけり 越智哲眞
風の出て佐渡の近づく鬼やらひ 多賀啓子
飛び石のごとき島々鬼やらひ 八染藍子
高嶺星風に吹き飛ぶ鬼やらひ 末永龍胆
鬱といふこころの鬼もやらひけり 池田秀水
鬼といふ掴めぬものをやらひけり 池内きり子
鬼の持て来し寒さかな鬼やらひ 石塚友二 光塵
鬼の死のこと伝はらず鬼やらひ 藤田湘子 てんてん

鬼やらひけふ横雲のばら色に 森澄雄
鬼やらひさびしき鬼は居てもよし 吉原文音
鬼やらひせりふもどきになりもする 中村吉右衛門
鬼やらひたる部屋の燈を消しておく 小川双々子
鬼やらひつららの牙を逃げゆけり 森澄雄
鬼やらひの声内にするこの家の翳りに月を避けて抱きあふ 小野茂樹
鬼やらひわれに主婦役男役 古賀まり子 緑の野以後
鬼やらひ不作の豆を鷲づかみ 山本登山
鬼やらひ二三こゑして子に任す 石田波郷
鬼やらひ二人暮らしに福の神 加田静子
鬼やらひ園児自作の面つけて 山口恵子
鬼やらひ夜の白雲のひと刷きに 中拓夫 愛鷹
鬼やらひ大きな声でと言はれても 小熊ハツ子
鬼やらひ山中だけの雪とべり 村越化石 山國抄
鬼やらひ月のまはりの空あをき 中拓夫 愛鷹
鬼やらひ杉も賢く並みゐしよ 加藤有水
鬼やらひ果てて鳥来る閼伽井嶽 吉田初江
鬼やらひ沖の白き帆逸りだす 加倉井秋を 『風祝』
鬼やらひ泣き虫鬼の居座れり 梶井和呼
鬼やらひ湯殿の鬼が揺れ動く 久保田月鈴子
鬼やらひ登四郎の家見にゆけり 篠原俊博
鬼やらひ肉屋の肉に灯のともり 円城寺 龍
鬼やらひ金堂黒く浮き出でぬ 林徹
鬼やらひ髷も凛々しく武蔵丸 高澤良一 宿好
鬼やらひ鰯焼く香に路地昏るる 磯崎兼久 『孤雲』
鬼やらひ鳥羽絵のわれと男の子 榎本好宏

鬼やらふこゑ低めても女ごゑ 石田あき子 見舞籠
鬼やらふとき大闇の相模灘 原裕 新治
鬼やらふにはまだ闇のととのはず 加倉井秋を 『隠愛』
鬼やらふには野の星の多すぎる 加倉井秋を 『隠愛』
鬼やらふはじめの壬生の鉦打たる 関戸靖子
鬼やらふインドカレーの息を以て 泉田秋硯
鬼やらふ三声がほども口の中 石塚友二
鬼やらふ哀しきことのすぐ終はる 加倉井秋を 『武蔵野抄』
鬼やらふ声のうつろや芒師の忌 西岡正保
鬼やらふ声の伸びゆく古欅 関戸靖子
鬼やらふ声ひゞかせつ産屋にも 下村ひろし
鬼やらふ声を母へも促しぬ 奈良文夫
鬼やらふ夜空に氷り比良の山 鷲谷七菜子 花寂び 以後
鬼やらふ大いなる銅鑼打ち鳴らし 山下智子
鬼やらふ夫はつくづく大男 田部谷紫
鬼やらふ嫁かず娶らぬ子が二人 佐藤喜代子 『水の綺羅』
鬼やらふ常は使はぬ間も灯し 桑島啓司
鬼やらふ母の臥所はねむごろに 築城 京
鬼やらふ画室書斎と闇のまま 皆吉爽雨 泉声
鬼やらふ空へ一の矢放ちたり 隈元君子
鬼やらふ聲ひびかせつ産屋にも 下村ひろし 西陲集
鬼やらふ遠く珊瑚の海があり 神尾久美子
鬼やらふ青星こごえ黄星よび 矢島渚男 釆薇
鬼やらふ面をめくれど同じ貌 小泉八重子

黒潮の風立つ島の鬼やらひ 佐野美智
うまさうに炒つてあるなり鬼の豆 大石悦子 百花
おかたまの木にぱら~と鬼の豆 萩原麦草 麦嵐
ねんねこに当つて跳ねる鬼の豆 高澤良一 ぱらりとせ
ほうろくや黒塚に見し鬼の豆 井原西鶴
受けてたのし子の手力の鬼の豆 細川加賀 『傷痕』
攻め焚の窯のほとりも鬼の豆 高橋たか子
炉開や火箸にかかる鬼の豆 許六
長靴にとび込んでゐる鬼の豆 升本行洋

鬼の豆たんと余つてしまひけり 片山由美子 水精
鬼の豆とびかふ三十六歌仙 西本一都 景色
鬼の豆吸ひて掃除機おどろけり 松倉ゆずる
鬼の豆噛み興福寺抜けてゆく 吉田汀史
鬼の豆噛んでユダにはなりきれず 長田等
鬼の豆嚼みて気力を養へり 相生垣瓜人 明治草抄
鬼の豆盗人入りし戸より打つ 上原瑞子 『燈台草』
鬼の豆閾に入れる知命かな 宮坂静生 春の鹿
鬼の豆食ふ夜真赤に癩の炉火 村越化石

「鬼は外」鬼の闇にて咳込めり 桜井博道 海上
わするるな日々に福は内鬼は外 広瀬惟然
われに棲むその時どきの鬼は外 夏礼子
去年遠く遠くへ遣らふ鬼は外 横井竜児
吾子のおなら鬼は外ともきこえける 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
川沿ひの家は川面へ鬼は外 下村ひろし 西陲集
戸あくれば吹雪面に鬼は外 岡野知十
火袋の燭消えさうや鬼は外 鈴木鷹夫 千年
裏声になつてしまひし鬼は外 内田美紗 誕生日
鬼の宿どこぞに在らん鬼は外 芹山 桂
鬼は外さびしき春を招くなり 大木あまり 火球
鬼は外はっきり言おうはっきりと 高澤良一 随笑
鬼は外卒寿の声のつつがなし 村山敏行
鬼は外我が家に春の遅きかな 角川源義
鬼は外日光笹の隈光り 平畑静塔
鬼は外父よまぶたを開けられよ 葉狩淳子
鬼は外福は内われどこへ行く 水原 春郎
鬼は外誰も帰つて来ぬ夜なり 石川千津子
どの鬼を憎むともなく豆打てり 殿村莵絲子 花寂び 以後
わが身より出でたる鬼へ豆打てり 平賀良子
大豆打つ鬼歯いよいよささくれ立つ 三浦晴子 『晴』
灼熱の鬼こそ出づれ豆打てり 辻桃子
豆打つやあれこれ鬼を見つくろひ 清水 游
豆撒いてわが家鬼ゐず吾子もゐず 橋本美代子
豆撒いて鬼より怖きもの払ふ 桂信子 草影
豆撒かれ鬼の飛び出す本成寺 本宮哲郎
豆撒きのさてどの鬼を追い出そか 小池美代子
豆撒きの鬼くにや~と逃げにけり 川崎展宏 冬
豆撒きの鬼の乗込む山手線 中橋文子
豆撒きや園長先生鬼となる 岩永節子
豆撒きを忘じて鬼を飼ひ馴らし 小野藤花
豆撒くに童話の鬼のみ遁走す 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
豆撒く児心に鬼をまだ持たず 山田みづえ 手甲
豆撒く闇鬼美しく育ちきし 豊田都峰
豆撒の鬼に教師ら借出さる 樋笠文
豆撒や子鬼はジヤングルジムの上 白石菊代
鬼そこにゐるごとく豆打ちにけり 鈴木真砂女 夕螢
クレパスで塗る節分の鬼の面 谷中隆子
持てば軽くて節分の鬼の面 辻田克巳

節分の夜ふる雨や鬼あらひ 貞徳
節分の小鬼坐れる患者椅子 山田ゆう子
節分の改札通る鬼の面 田島星景子
節分の書屋の鬼は追はしめず 亀井糸游
節分の海の町には海の鬼 矢島渚男
節分の空地に鬼の面外す 白石不舎
節分の追はれし鬼と路に会ふ 猪俣千代子 堆 朱
節分の飛騨は終着小鬼よ来い 国 しげ彦
節分の鬼が笑へば子も笑ふ 柴田華世子
節分の鬼となるべく父帰る 落原美佐女
節分の鬼にもなれず漂へり 高柳雅代
節分の鬼に赤んべして居る児 竹内和子
節分の鬼の出てゆく換気扇 長内道子
節分の鬼の出てゆく鉄のドア 北見さとる
節分の鬼の破りし障子貼る 吉田立冬子
節分の鬼まぎれゐる人の渦 香坂恵依
節分の鬼戻りしか夜の地震 小笠原喜美子
節分の鬼追ひ出して早寝せり 阪口良子
節分の鬼面福面真理出でよ  (節分の夜鬼面福面をかぶりておどけし事あり) 角川源義 『冬の虹』
節分や内なる鬼に目をつぶり 中村恵如
節分や去らぬ鬼のみふえゆけり 照敏
節分や小雨の嶺へ鬼逃がす 雨宮抱星
節分や心にひそむ鬼もなし 大谷句佛 我は我
節分や暗がり坂を鬼面の子 中村外紀子
節分や海の町には海の鬼 矢島渚男 梟
節分や鬼もくすしも草の戸に 高浜虚子
節分会湯殿へ走る僧と鬼 中條今日子
節分会膓の鬼追ふ内視鏡 仲安俊雄 『冬耕』
節分会鬼も畳に正座して 大前幸子
節分草やらひし鬼の数ならむ 間渕うめ子

鬼が来て 子をあやしいる 節分会 伊丹公子 時間紀行
鬼が突く張子鉄棒節分会 堀 勇
鬼の子のはしやぎて逃げる節分会 平岡喜美子
鬼は見え福は見えざる節分会 江川由紀子
鬼払ひ雪となりたる節分会 松井利彦
乾鮭の頭めでたし鬼退治 追儺 正岡子規
五重塔裏にひそめり追儺鬼 吉中愛子
余生なる鬼よ吾と酌め宵追儺 林昌華
出番待つ追儺の鬼が髪を梳く 北川素月
吉田山の闇よりぬつと追儺鬼 水谷芳子
吾子の描く追儺鬼とはぱつちり目 山本雅子
大津絵の鬼も出て来し追儺かな 大石悦子 群萌
大男かくも役立ち追儺鬼 佐藤淑子
書架に棲む鬼何々ぞ追儺豆 肥田埜勝美
独居は鬼もわが友追儺の夜 古賀まり子
社家の子と生れ追儺の鬼の役 角菁果
篁に追儺の鬼風となる 浅沼仁子
老いぬれば鬼も内なる追儺かな 野見山ひふみ
謝りて追儺の鬼の役終る 桂信子 草影
追儺の夜鬼もてあます泰平餅 田口一穂
追儺会のこの雑踏に鬼もゐる 塩川雄三
追儺会の抱かれて逃げる子供鬼 長谷川郁代
追儺会の鬼も賜はる般若湯 児島千枝
追儺会や鬼したたかに酔ひてゐる 宮崎良徳
追儺会や鬼の加持受く異国びと 鶴 せつ
追儺式鬼を無視して犬通る 内田滋子
追儺狂言鬼の出となりざわめけり 茂里正治
追儺狂言鬼酔ひ固唾呑みにけり 大野林火
追儺豆雨戸二枚の鬼を打つ 松山足羽
追儺鬼如来の蔭で出を待てり 加藤サヨ子
追儺鬼逃れし方へ山動く 岩崎憲二
面とりて追儺の鬼も豆を撒く 大橋宵火
面取つて鬼拾ひ出す追儺豆 荒井英子
風吹て鬼迯げて行くけはひあり 追儺 正岡子規
鬼どもが踊る本山追儺寺 峰森よね子
鬼の出をさそふ追儺の大太鼓 寺田和生
鬼の来る道あけてあり追儺寺 水野蓮江
鬼もちよと刻まれてあり追儺の膳 稲岡長
鬼外れし追儺の豆に打たれけり 茂里正治
鬼役のおくれておりぬ追儺式 上城季乃
鬼逐はれ狐栖みつく追儺寺 清水晴子
鬼面より息を漏らして追儺の鬼 橋本美代子
どれほどの幸をねがひて鬼打つや 金久美智子
よろこびて鬼打豆にうたれけり 山田みづえ 木語
仕入荷の中に鬼打ち用の豆も 鈴木真砂女 夕螢
滑稽の力と云へり鬼打つも 相生垣瓜人 明治草抄
竹鳴つて鬼打ち豆や雪に散る 石川桂郎 高蘆
臥す人に鬼打豆をひそと置く 依田久子
鬼打ちし闇に吾が貌見てしまふ 小川廣男
鬼打ちてことごとく灯をともしけり 徳永山冬子
鬼打つと人の傲らむ夜なりけり 相生垣瓜人
鬼打の豆の混じりし飼葉桶 綱島 清
鬼打の豆はねかへす堂柱 赤坂邦子

●百鬼夜行 Hyakki Yagyo - Night Parade of A Hundred Demons
すててこや百鬼夜行のしんがりの 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
光起が百鬼夜行く野分哉 野分 正岡子規
古寺や百鬼夜行の霜のあと 霜 正岡子規
夜寒さや百鬼夜行の絵巻物 寺田寅彦
曉齋の百鬼夜行図おお涼し 高澤良一 寒暑
月の寺百鬼夜行図など蔵す 黒田杏子 花下草上
花嫁に百鬼夜行のまんじゆしやげ 加藤かけい
虎落笛百鬼夜行を旨とせり 柴田奈美
雪折れは百鬼夜行の跡ならむ 松尾龍之介

●鬼面 kimen - demon mask
ひよんどり鬼面外せば優男 山田紫水
一刀彫鬼面に雪の暗むかな 冨田みのる
三寒の鬼面とまがふ釣り魚 河野南畦 湖の森
児が眠る寒夜の鬼面あほむけに 鈴木稲花
冬旱鬼面に髪のわづかあり 鈴木鷹夫 風の祭
壬生踊鬼面の紐をしめ直す 山田耕子
太鼓打つ月に鬼面をのけぞらせ 大星たかし
夫立つや炎昼黒き鬼面山 加藤知世子
妻無しの鬼面を映す寒の闇 石原八束 『断腸花』
峡空の凍て日輪に鬼面嵌む 友岡子郷 遠方
日闌けてはよよと陽長ふ鬼面岩 下村ひろし 西陲集
父と見し紅葉ぞしるき鬼面川 川崎展宏
父と見し紅葉の極み鬼面川 川崎展宏
白息のかつかつ鬼面をどりかな 矢崎良子
祭鬼面を外して薬飲む 長谷川青松
秋の暮鬼面かむれば何見えむ 八牧美喜子
秋祭鬼面をかぶり心も鬼 山口誓子 不動
節分の鬼面福面真理出でよ(節分の夜鬼面福面をかぶりておどけし事あり) 角川源義 『冬の虹』
節分や暗がり坂を鬼面の子 中村外紀子
肉づきの鬼面をはがす報恩講 森本青三呂
花神楽鬼面に動く喉仏 三浦晴子 『晴』
鬼は遺り鬼面瓦は愛蔵す 百合山羽公 寒雁
鬼面つければ暗い湖底の音が聞こえる 飯島翆壺洞
鬼面とて翳れば愁ふ秋灯 鍵和田[ゆう]子 未来図
鬼面となり仏相となり夜霧の工夫 加藤知世子 黄 炎
鬼面にも大小のあり壬生念仏 中原一樹
鬼面よりのぞく目が燃ゆ大焚火 橋本榮治 麦生
鬼面より息を漏らして追儺の鬼 橋本美代子

●赤鬼 aka-oni, red demon
咳にせき赤鬼顔をしてはゐずや 山田みづえ 木語
大津絵の赤鬼いぶす蚊遣哉 蚊遣 正岡子規
手をひかれ赤鬼来り離分会 室谷幸子
炉火に招ばれ石工赤鬼めく顔に 石橋林石 『石工日日』
節分の赤鬼がをる夕浅間 森 澄雄
節分や子の赤鬼がかくれゐて 原コウ子
花しどみ赤鬼どもの忘れもの 山中葛子
豆撒きの赤鬼さんと青鬼くん 高澤良一 宿好
赤鬼と孤独分けあふ春の月 斎藤光子
赤鬼に頭撫でられ厄落す 服部冨子
赤鬼の如き異人や土用波 久米正雄 返り花
赤鬼の集まつてゐる夜の焚火 櫨木優子
赤鬼は日本の鬼鬼やらひ 石田波郷
赤鬼は蹠も赤し涅槃の図 塩川雄三
赤鬼は青年らしき壬生狂言 花谷和子
赤鬼も青鬼もゐて唐辛子 藤岡筑邨
踊る赤鬼跳ぶ松明は小鬼たち 羽部洞然
躍り出る赤鬼焚火靡かせつ 羽部洞然

●青鬼 ao-oni, blue/green demon
我恋や口もすはれぬ青鬼燈 嵐 雪
豆撒きの赤鬼さんと青鬼くん 高澤良一 宿好
赤鬼も青鬼もゐて唐辛子 藤岡筑邨
青鬼の皺だるむ腹壬生狂言 山田みづえ
青鬼の背中が泣いて涅槃絵図 規子
青鬼は憎しと豆の集中す 後藤比奈夫 めんない千鳥

●子鬼 child demon
ぬかるみを子鬼が跳べり鎮花祭 永方裕子
安良居の睡りし子鬼横抱きに 関戸靖子
豆撒や子鬼はジヤングルジムの上 白石菊代
雪ねむる小枝に子鬼ワイワイ来た 小山淑

●餓鬼 gaki hungry demons
ひしひしと餓鬼つく宵や蕎麦をかく 中勘助
をのれさへ餓鬼に似たるよきりぎりす 服部嵐雪
亀鳴くか鳴かぬか鳴けり餓鬼阿修羅 今瀬剛一
六波羅に餓鬼道の絵や迎へ鐘 山本右近
冬の星堕ちて餓鬼田の夜明けかな 橋本榮治 逆旅
冷房を出て餓鬼となりあるきけり 徳永山冬子
十界に餓鬼界のその寒さかな 尾崎迷堂 孤輪
大王にひれ伏す餓鬼や壬生狂言 岸風三楼 往来
孑孑とどぶ板そして餓鬼の頃 山口三郎「未来図合同句集」
寒夕焼このよかのよの万の餓鬼 田中水桜
寒蘚や餓鬼が水くむ山の音 古舘曹人 樹下石上
小鬼出て壬生狂言は餓鬼角力 細川加賀 生身魂
山の餓鬼月夜の柿にぶらさがり 臼田亜浪 旅人
年忘れ長者独りに餓鬼九人 中村史邦
恋餓鬼となりぬ茨の芽も炎えよ 齋藤玄 『玄』
手足あげ地蔵流しの餓鬼溺る 西本一都 景色
掃き寄せて餓鬼三人の寒の塵 小林康治 四季貧窮
掃苔や餓鬼が手かけて吸へる桶 山口誓子
星月夜覚めて餓鬼の田相寄るか 杉山 岳陽
昼寝覚友二金餓鬼の句を思ふ 細川加賀 『傷痕』
書餓鬼の眼灯に爛々と秋夜かな 西島麦南 人音
梅雨冷や舌に朱のこる餓鬼草紙 三森鉄治「仙丈」
楊梅の味忘れめや餓鬼の舌 川崎展宏 冬
楪や音を消したる餓鬼草子 宮坂静生 山開
水喧嘩餓鬼負うて女走りけり 萩原麦草 麦嵐
汗の香の職餓鬼ばかりビール酌む 小林康治 玄霜
火中にて瓜馬立てり川旅餓鬼 石川桂郎 高蘆
燈籠船餓鬼の仕業か覆す 柴田奈美
白き餓鬼こぶし震はせ壬生狂言 田中灯京
白雲の去ぬればみえる山の餓鬼 安井浩司
百方に餓鬼うづくまる除夜の鐘 石田波郷
盆近き餓鬼の田草の実を持てり(小林秀雄氏等と立山にのぼる。弥陀ケ原に餓鬼の田植ゑすといふ餓鬼田の伝説あり) 角川源義 『口ダンの首』
秋つばめ餓鬼岳寂と色を変ふ 藤田湘子 てんてん
芒原餓鬼も法師も水飲みて 斎藤梅子
花の下骸骨踊り餓鬼笑ひ 行方克巳
草紅葉敷きて餓鬼の田とびとびに 吉澤 卯一
衣更鼻たれ餓鬼のよく育つ(病中子を省みず自嘲) 『定本石橋秀野句文集』
豊作や賎の四五戸に餓鬼喚く 村山古郷
賽銭を餓鬼のかすむる祭かな 森川暁水 黴
赤潮に犬のかたちの餓鬼立てり 谷野予志
転がれる林檎は餓鬼にくれてやろ 橋本美代子
辻飯に今宵どの餓鬼来ますらむ 山田みづえ
迎鐘一つ餓鬼にも打ちにけり 山本和永
追儺の夜餓鬼の如くに出て歩く 福永耕二
遠足の餓鬼ぞろぞろとぞろぞろと 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
野分して餓鬼岳襞をあらはにす 玉木春夫
金餓鬼となりしか蚊帳につぶやける 石塚友二「方寸虚実」
雪嶺やコーヒー餓鬼のわが乾き 秋元不死男
雪明り黄いちめんの餓鬼艸紙 石寒太 あるき神
雪近し餓鬼田は千の藍湛へ 白澤よし子
霧過ぎて照る餓鬼岳は岩ばかり 小野宏文
風混へ降る雪いよよ点字餓鬼 金子晃典 『望郷独語』
餓鬼となり菩薩となりし曼珠沙華 村松弘美
餓鬼のしりへにぬかづく恋か放屁虫 稲垣きくの 黄 瀬
餓鬼の田に旱の夜の水遊ぶ 長谷川草々
餓鬼の食雲もかかるな清見寺 許六
餓鬼乗せし葦菜舟の一つかな 松藤夏山 夏山句集
餓鬼共の蜜柑ほしがる十夜かな 福田掘栗
餓鬼岳は紅葉緋縅岩鎧ふ 福田蓼汀 秋風挽歌
餓鬼岳は雷神の座や見えずとも 小澤實「瞬間」
餓鬼道のごと旱田の中の道 安田杜峰 『蛍草』
餓鬼道の青草にほふ盆会かな 飯田蛇笏 霊芝
餓鬼鴉われの白息奪はれじ 村越化石 山國抄
鬼は熱し餓鬼は涼しと悟らずに 涼し 正岡子規
鳴子引く僧の後生や臼の餓鬼 鳴子 正岡子規
七五三餓鬼大将も大人しく 山本孝司
先頭の餓鬼大将へゐのこづち 加藤洋子
欠席の餓鬼大将は春の風邪 辰野千鶴子
毬栗の餓鬼大将もゐたりけり 平井照敏 天上大風
目白五羽捕りて杣の子餓鬼大将 三浦妃代 『花野に佇つ』
赤貝のからや乗初(のりぞめ)餓鬼大将 濯資 選集「板東太郎」
金魚掬ひ昔餓鬼大将の腕 岡崎玲子
餓鬼大将世に失せにけり次郎柿 橋本榮治 麦生
鬼胡桃餓鬼大将は子沢山 相馬禮子

●鬼婆 onibaba - old demon hag
菊人形胸辺枯るるは鬼婆よ 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
鬼婆々の泪見せたる蚊遣哉 蚊遣 正岡子規
鬼婆々の角を折たる十夜哉 十夜 正岡子規
鬼婆が何んで紅着る菊人形 渡辺恭子
鬼婆の住むにはあらじ灯火親し 原澤ふみ
鬼婆の団扇火の色鬼来迎 脇本千鶴子
鬼婆の役の若者アロハシャツ 毛塚静枝
鬼婆の棲める山あり狐鳴く 阿部月山子
鬼婆の洗ひ場濁る野分あと 柏原眠雨

●鬼女 kijo - demon woman
きりぎりす鬼女伝説を絵にて説き 宮津昭彦
ここは地の底鬼女も草木に数へらる 栗林千津
この木登らば鬼女となるべし夕紅葉 三橋鷹女
この枯野走り抜けねば鬼女に遇ふ 石川文子
この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉 鷹女
しぐるるや宮に兀げたる鬼女の面 闌更
仮の世の鬼女ともなれず紅葉狩 三橋 迪子
嚇つと照る紅葉や鬼女の高笑ひ 嶋田麻紀
壬生狂言鬼女に食はれて歩き消ゆ 右城暮石
戸隠の菊人形の鬼女やさし 福田蓼汀 山火
春曉の夢の女は鬼女なりし 岩崎照子
村芝居子の眼前に鬼女と化す 谷野予志
桜川の岸辺鬼女とも花明り 岩下斜径
櫨紅葉鬼女洞窟を荘厳す 町田しげき
渡し場の雷雨に佇つや鬼女めくも 鍵和田[ゆう]子 浮標
神無月狂女を叱るわれは鬼女 中川禮子
秋寒し眼の光る鬼女の面 秋寒 正岡子規
紅葉濃し鬼女の出て来よ夕曇 椎橋清翠
紅葉狩振り向けば鬼女現るるかも 中田勘一 『雪礫』
美しき人の鬼女めく紅葉谷 小檜山 霞
美女現前鬼女も招ばんと紅葉焚く 中村草田男
能衣裳まとふ鬼女とも夜の紅葉 中原宏子
芒原子とろ遊びに鬼女出さう 奥田恵美 『再度山』
花槐鬼女になりたいはなえんじゅ 岸本マチ子
葉鶏頭いま振向けば鬼女の顔 川島千枝
薪能太鼓早打ちして鬼女に 吉田紫乃
薪能鬼女に月光憑きにけり 松本圭二
薪能鬼女の金欄火に染まる 品川鈴子
裾花の鬼女の裳裾はいま萌黄 伊藤敬子
連れすでに鬼女と化しつつ紅葉宿 星野石雀
鐘見えぬまで萱積みし鬼女の寺 西本一都 景色
雪来るか一山笛の鬼女の里 丸山美沙夫
韮の花に南蛮いけて鬼女の庵 中勘助
顔見世や鬼女は赤毛の揃ひ踏み 壺井 久子
風呂吹や師走の闇を鬼女の影 中拓夫 愛鷹
鬼女が飛び飾り注連揺る薪能 浅田聡纓
鬼女たちまち闇に消えけり薪能 矢田插雲
鬼女なにかつぶやきはじむ紅葉谿 加藤耕子
鬼女になり童女にもなり梅雨茫々 野澤節子
鬼女の像灼けつつ内面夜叉美人 加藤知世子 花寂び
鬼女の出に昼の月あり壬生狂言 山尾玉藻
鬼女の名をとどむ石塊冬蚊出づ 石橋まさこ
鬼女の図の爪に弾痕冴返る 伊藤いと子
鬼女の笛ながれそむなり初紅葉 湯本道生
鬼女の血が妻にも少し青葉木菟 西川 五郎
鬼女の面柱に哄ふ月の真夜 桂信子 草影
鬼女もまた口中渇く紅葉山 高橋かほる
鬼女出むと昂ぶる松や月の能 ふけとしこ 鎌の刃
鬼女拠りし山の懸巣のたかぶれり 磯崎兼久 『孤雲』
鬼女消えて狂ひ蛾残りぬ篝能 平井さち子 紅き栞
鬼女祀る堂出て日暮とりかぶと 高澤良一 ねずみのこまくら
鬼女谷に入り行く紅葉かつ散れり 町田しげき
鬼女谷の木橋渡る子鳩吹けり 大川幸子 『小春日和』
鬼女跳べり全山枯るる閑けさに 河合凱夫
鬼無里村河鹿謡へり鬼女紅葉 高澤良一 燕音

●般若 Hanya
いぼむしり般若波羅蜜はらみけり 赤松子
くれて知る比叡の般若や夕ひばり 麦水
さくらの夜いつもどこかに般若の目 三宅文子
ねぢばなや怨候と般若面 如月真菜
ほろ~と椿落つるや大般若 幸田露伴 谷中集
万緑に隠れなきかな般若窟 森田純一郎
三崎より大根届く般若講 中橋文子
乱鴬や夜叉の般若の女面 大橋麻沙子
冬紅葉前の世に憑く般若面 山田晃裕
冷まじく般若舞台に現はれぬ 原子公平
初冬や心肥えたる般若経 野村喜舟 小石川
大般若寺の祝ひの村芝居 正野房代
大般若櫃には触れず煤はらひ 南上北人
大般若老若男女菩薩顔 熊谷喜一
山へ空へ摩訶般若波羅蜜多心経 山頭火
方等と般若と懸る紅葉哉 紅葉 正岡子規
春寒しことりと傾ぐ般若面 山田チイ子
春風や目にあまりたる大般若 春風 正岡子規
椎の香の般若の芝を覆ひけり 稲畑汀子
猛火にて般若波羅蜜多厄を絶つ 平畑静塔
生般若に菩提僧莎訶(ぼうじそわか)なお人もゐ 筑紫磐井 花鳥諷詠
綿虫や般若の経はテープより 小檜山繁子
般若てふ桜の髄の明りをり 伊丹さち子
般若は野暮天を得てゴムを永遠にする 加藤郁乎
般若寺の千草のなかの牛膝 大石悦子 聞香
般若寺の紅梅簷を深うしぬ 山口草堂
般若寺の賜ひし花の種袋 広瀬千鶴
般若寺の釣鐘細し秋の風 秋風 正岡子規
般若寺へ萩の枯れしを確かめに 神蔵 器
般若櫃うつろの秋のふかさかな 青畝
般若波羅蜜小声に桑の実をぬすむ 高井北杜
般若面夜に入らむと吹雪けり 本城佐和
花柘榴子を生さで愛づ般若面 鍵和田[ゆう]子 浮標
虚の目に雪のちらつく般若面 鷲谷七菜子 花寂び
虫干やかつぎ出されし大般若 池上浩山人
虫干や千畳敷を大般若 藤野古白「古白遺稿」
虫払ひ大般若経積み上げて 浜崎晃子
逝く秋の深き翳りの般若面 栗林智代子
院々の梅ほころびぬ大般若 九湖
隙間風般若波羅蜜多生きたしや 田川飛旅子 『山法師』
雪しんしん凛々と朝の般若経 西田孤影
青啄木鳥に般若会の磬応へけり 堀口星眠 営巣期
高麗版の大般若経蝉の昼 田中英子

●夜叉 Yasha
あぢさゐや瀧夜叉姫が花かざし 永井荷風
ゆく秋の夜叉神峠の雲迅し 倉林美保
わが庭に山吹棲みてわれに夜叉 齋藤玄 『玄』
われも夜叉かな昼の芒にまどろめば 間庭とよ子
三日、強風、"金色夜叉"の夜に入れり 久保田万太郎 流寓抄以後
乱鴬や夜叉の般若の女面 大橋麻沙子
仏とも夜叉とも見えて雲の峰 郡山とし子(好日)
半纏木軍荼利夜叉に花こぞる 中戸川朝人
厠男して株る半ちくの夜叉しさ 加藤郁乎
善女とも夜叉ともなれず春の闇 奥田恵美 『再度山』
外能登や海かけて来る夜叉時雨 岩坂満寿枝
夜叉となり観音となり焚火果つ 小川原嘘帥
夜叉の面つけて舞ひたき芒原 北井ちず子
夜叉五倍子の実なり生つても生つても生る 後藤比奈夫 めんない千鳥
夜叉五倍子の青実南風にごっつんこ 高澤良一 燕音
夜叉神に女人の土工霜溶くる 飯田蛇笏 椿花集
夜叉神の修羅落しあと霧雫 中戸川朝人 星辰
夜叉舞や舞ひ崩れてはおらびつつ 高柳重信
姫夜叉と名付けし竹も春の頃 大島民郎
山焼の夜叉の火影のはしるかな 大橋敦子 匂 玉
振り向けば夜叉の相かも大枯野 白井 爽風
挿し置きし夜叉五倍子花粉こぼしをり 中戸川朝人 尋声
斑猫のとぶ夜叉神の峠口 荒川優子
月浴びて夜叉のはくれん突っ立てる 高澤良一 随笑
桑の実を夜叉の口もて食うぶかな 大石悦子 群萌
片蔭にまなこつむりて夜叉を飼ふ 仙田洋子 橋のあなたに
短夜を夜叉駆け抜ける目覚めかな 榎並信一
糸瓜忌の夜叉のごとくに七分粥 古舘曹人 樹下石上
花散らす夜叉を彫られし姐御かな 筑紫磐井 婆伽梵
草うらの影絵の世界 匂ふべき夜叉のおごりもあさつきの色 筑紫磐井 未定稿Σ
菩薩と夜叉こもごも看取り明易し 木村 ふく
見夜火堂夜叉倍子の実のくろぐろと 高澤良一 鳩信
貌見せぬ夜叉払ひたる鎌鼬 中村順子
赤城嶺のはだれて宵は夜叉の道 鳥居美智子
野を渡る夜叉嫁入り道具になりすまし 西川徹郎 天女と修羅
雪道で歯が抜け落ちて夜叉になる 富岡和秀
鬼女の像灼けつつ内面夜叉美人 加藤知世子 花寂び

●阿修羅 Ashura
あをによし奈良には阿修羅麦の秋 高橋紀子
こののちは秋風となり阿修羅吹かむ 大石悦子
すでにして春の阿修羅の滝なりけり 樋笠文
たをやなる阿修羅の六臂曼珠沙華 文挟夫佐恵 遠い橋
ふり返るとき阿修羅なり洗ひ髪 鷹羽狩行 七草
めぐりては阿修羅に戻る秋しぐれ 小沢真弓
ゆく春の阿修羅の声を聴きたしや 大野崇文
わが生は阿修羅に似たり曼珠沙華 角川春樹
わが胸に阿修羅一本唐辛子 関 礼子
ジェット機に見えぬ阿修羅と初空飛ぶ 隈 治人
亀鳴くか鳴かぬか鳴けり餓鬼阿修羅 今瀬剛一
仏陀見て阿修羅の息の花ユッカ 河野多希女 月沙漠
伐採の阿修羅の山も眠りたる 大岳水一路
何愁ふ阿修羅か春の立ちにけり 大橋敦子
修羅阿修羅ききてさびしき雁の声 河野多希女
冬拒む阿修羅三面六臂もて 鈴木栄子
冬鳩の風をみちびく阿修羅仏 河野多希女 彫刻の森
凍滝の阿修羅の相を愛しめる 堀口星眠 青葉木菟
唇噛んで阿修羅は若し朝の虻 山田孝子
夏めきて阿修羅おもざし吾子に肖る 下村槐太 天涯
多佳子亡き奈良や阿修羅と春惜しむ 吉野義子
夜の野火阿修羅が好きといふ女 木田千女
寒き宙支へ阿修羅の肘直角 横山房子
少年の瞳して阿修羅のしぐれをる 鍵和田釉子
山国の雲の阿修羅に梅雨の月 西本一都 景色
岳樺幹の阿修羅に秋烈日 高澤良一 ぱらりとせ
崖の石蕗濤の阿修羅に海へ散る 河野南畦 湖の森
彼岸冷え阿修羅の頬に罅はしる 西脇妙子
新松子阿修羅の勁き瞳かな 岡野美代子
春の雪阿修羅ともはた涅槃とも 行方克己 昆虫記
春寒の阿修羅は夫の恋仏 大石悦子 群萌
春昼や奏でんとして阿修羅の手 中田剛 珠樹以後
春暁や阿修羅の放つ火のにほひ 宇佐美魚目
時雨来る阿修羅の眉目くもらせて 橋本榮治 麦生
曼珠沙華髪を阿修羅に病めりけり 西本一都
月光が射さば阿修羅は春の蜘蛛 宮坂 静生
朝の空阿修羅の朱とおもふべし 中田剛 珠樹以後
朴ひらく流れ阿修羅となる処 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
松風や阿修羅涼しく腋をあげ 前田普羅
栗をむく吾は阿修羅の顔をして 楠節子
母を待つ顔なる阿修羅遠蜩 林昌華
水仙や紅顔阿修羅いまも立つ 中田剛 珠樹以後
沼にほひだす三月の阿修羅かな 宮坂静生 山開
深田なり阿修羅の如く稲刈れる 相生垣瓜人 明治草抄
滝もあしゆら紅葉も阿修羅みちのくは 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
火祭の火の粉たばしる廊阿修羅 黒柳美村
爽かに阿修羅の肱の尖りけり 猿橋統流子
眉あはくひそめて阿修羅落葉ふる 中田剛 珠樹以後
秋寂ぶや阿修羅のあをき髭(くちひげ)も 大石悦子 百花
花冷に阿修羅の三面眉根寄す 横山房子
若葉光阿修羅眉間を解かざりし 谷中隆子
荘厳に閻浮檀金の夜の闇花散りどきの阿修羅彷彿 筑紫磐井 未定稿Σ
菫摘む阿修羅の眉間おもひつつ 河原枇杷男 訶梨陀夜
藤むしってしまいそうわが阿修羅の手 高橋紀子
蝌蚪の紐からまる水の阿修羅かな 岡本正敏
蝶がくる阿修羅合掌の他の掌に 橋本多佳子
蝶の晝阿修羅の一指も匂ふらむ 河原枇杷男 蝶座
説も阿修羅紅葉も阿修羅みちのくは 秋子
遅れ田を植うる阿修羅の老夫婦 杉山岳陽
阿修羅あり雲雀あがれる興福寺 森澄雄
阿修羅その眦の朱も寒のうち 澁谷道
阿修羅ともなろか椿に戻らうか 塚越美子
阿修羅と逢う噴き溢れ散る雪柳 渋谷道
阿修羅の鵜女体とききしあはれさよ 渡辺桂子
阿修羅の鵜浮けば眸の潤みをり 石鍋みさ代
阿修羅王敗れ夕焼終りの朱 岩村蓬
阿修羅迦楼羅緊那羅摩呉羅伽大火かな 尾崎迷堂 孤輪
雪は阿修羅かたみに父祖の家を守る 竹田菁雨 『瞽女慕情』
雪折れの竹の阿修羅に中洲村 岩井三青 『草珊瑚』
雪阿修羅そのなかを行くわれ阿修羅 工藤克巳
霧来れば阿修羅見す木ぞ岳樺 高澤良一 鳩信
露噴いて夜は鎮まりぬ阿修羅仏 加藤知世子 花 季
青嵐いまぞ阿修羅の六臂欲し 澁谷道
青嵐阿修羅の笑みを垣間見し 高澤晶子 純愛
鮭打を阿修羅の貌と見たりけり 大橋敦子 匂 玉
麦焼の阿修羅の如く火をくぐり 山口青邨

- source : taka.no.coocan.jp/a5/cgi-bin/HAIKUreikuDB -

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